9.人々の帰還

ローリー、サム、そしてジャックは、この世界の出口を探していた。
この国に迷い込んだ人々を、元の世界・地球に帰すためである。
しかし、それはなかなか見つからなかった。
「出口なんて、どこにもないじゃないか」
「空にあるとか?」
「それはないよ、ジャック。仮に空にあったとしても、魔法使い以外は空を飛べないから出られない」
「そっか……」
こうして3人は悩んでいた。

すると、ローリーの肩を誰かが叩いた。

「誰だ!」

条件反射で、ローリーが振り返り、銃を相手に向ける。

しかし、そこに居たのは、優しい顔をしたお年寄りだった。

「え……?」

ローリーは銃を降ろした。
そして、お年寄りはゆっくりと話した。

「貴方達、旅の者かい?」

「いえ、旅と言うよりも、ここに迷い込んでしまった人達を助けに来た者です」
ローリーが答えた。
「あら、本当? 私達を助けに来たのね?」
「ええ、そうです。しかし、この世界の出口が見つからなくて、困っているんです」
今度はサムが言った。
「出口なら、もう見つかっていますよ。みなさんも、もう集まっていますよ」
「えっ!!!」
3人は驚いた。
今まで探していた出口が、あっさりと見つかったからである。
「それはどこに?」
ジャックが聞いた。
「ついて来れば、分かりますよ」
「あ、はい!!!」
3人は、お年寄りについていくことにした。


お年寄りの名は、サリーといった。
壷の国には、一週間程前に迷い込んでしまったという。

彼女について歩いていくと、そこには、大きな穴の開いた岩があった。
「ほら、着いたわよ」
彼女は、それの前で立ち止まる。
「……これって、洞窟?」
ローリーが恐る恐る尋ねた。
「ええ、そうよ。この奥に出口があるみたいやけど、開かなくてね。手伝ってくれるとありがたいんやけど」
3人は顔を見合わせ、頷いた。
「もちろん、協力します」


洞窟に入ってしばらく進むと、人々の声が聞こえ始めた。
サリーの言う通り、迷い込んだ人々は皆ここに居るようだ。
ちらほらと、明かりや人影も見える。
「……いつになったら、元の世界に戻れるのか?」
「外に行ったサリーさんも戻ってこないし、心配だなあ」
その様子を見聞きしたサリーは、歩くスピードを少し速めた。
「少し、急ぎましょうかね」
「はい」
3人も、歩くスピードを速めた。


「皆さん、お待たせしましたよ」
人々が集まっている所に着き、サリーは言った。
すると、彼らは歓声を上げた。
「サリーさん、無事で良かったです!」
「時間になっても戻って来ないので、心配しましたよ」
そう言っている中で、一人の少女が手を挙げて言った。

「サリーさん、貴方の後ろに居るのは誰ですか?」

その一声で、人々の騒めきは消えた。
彼らの目線が、彼女と後ろに居た3人に集まる。

「おい、俺達、注目されてるぞ」
「当たり前だろ。あいつ等にとっては、俺達は救世主だからな」
「そうでしょうね。前に出て挨拶してきたらどうです?俺は助けられる側なので、ここで待っています」
「そうだな。サム、行くぞ」
「ああ」

ローリーとサムは、サリーの前に出た。

「俺達は、ここにいる君達を助けに来た。それ以外の何事でもない」
ローリーが言うと、人々は驚きの声を上げた。
それが収まらないうちに、サムが言った。
「ここに開かない出口があると聞いてやってきた。どうにかしてその出口を開け、君達を元の世界へ帰そう」
人々の驚きの声は、さらに大きくなった。
「ありがとう! 本当に、ありがとう!!」
「神は、やはり我々を見捨てたりはしなかった!」

そして2人は、サリーに言った。
「出口の場所、教えてくれませんか?」
サリーは答えた。
「この洞窟の一番奥にありますよ」
「分かりました」

2人は人々を掻き分けて、指示通り、洞窟の一番奥に行った。
そこには、大きな岩があり、こう書かれていた。

  ”この岩の向こうに、未来はある”

どうやらこの岩を壊さないと、元の世界には戻れないらしい。
だが人々の力ではこれを壊せないので、ここに居座ってた訳だ。

でも、魔法使いの手に掛かれば、このような岩も、

「余裕で壊せるな」

2人同時にそう言うと、ローリーは銃を岩に何発か打ち込んだ。
その衝撃で脆くなった岩に、サムが呪文を唱えた。

「人々の未来を邪魔する岩よ、今すぐ退け!!」

すると岩は壊れ、紫色の渦と、短いメッセージが表れた。

  ”よくここまで来た。
   戻りたい場所の名前を叫びながらこの渦に飛び込むと、そこに戻れるだろう”

その瞬間、洞窟が歓声に包まれ、次々に人々が戻りたい場所を叫びながら、渦の中に飛び込んでいった。

「ロンドンへ!」
「ベルリンに帰るぞ!」
「いくぞ! ニューヨーク!」

そしてあっという間に、洞窟はローリーとサムの2人だけになってしまった。
サリーやジャックも、既にいなくなっていた。

「さて、こっちは一段落だな」
「なら、ボス達を手伝いに行こうか……」


その時、グラグラ、と、地面が揺れた。


「……地震だ!!」

「逃げるぞ!!」

2人は、勢いよく駆け出した。