Test! Test! Test! ①


6月下旬。
多くの学校で、期末試験が行われる時期だ。
もちろん、元気たちの通う学校も例外ではない。

試験発表の日。
帰りの会で試験範囲のプリントが配られた。
大半の生徒が一通りプリントに目を通し、連絡ファイルにしまう。

そんな中、席が隣同士の井上姉弟は、プリントを見ながら話していた。

「姉ちゃん、今回の範囲、どう思う?」
「……国語、理科、英語、音楽は楽勝だな。後は勉強すれば何とかなる。お前は?」
「数学と社会、美術は大丈夫かな。今回こそは、」

と、彼は何か言いかけたが、担任の言葉に遮られた。

「そこのお二人さん。会話は後でしてください」

その言葉に、2人は素直に黙らざるを得なかった。


                     ◆


担任の話が終わると、ちょうどチャイムが鳴った。
生徒は挨拶をし、各自の目的の場所へ散っていった。

井上姉弟は、先程担任に遮られた会話を再開した。

「そういや、さっきお前何か言いかけたけど、何て言おうとしたんだ?」
「ああ、あれね。『今回こそは姉ちゃんに勝つ』と言いたかったんだ」
「……お前、それ今までに何回言ったと思っているんだ?」
「……何回だろうね」

2人の成績は、互角だった。
順位も、10位以内の常連だ。
だが、今までの結果は8回勝負して6対1、1引き分け。
姉の優子が勝った回数の方が多い。
しかも、そのほとんどが5点差以内の勝負。
元気は、なかなかその『5点の壁』を越えられずにいたのだ。

「でも、今回は絶対に勝つ自信があるんだよな。もちろん順位は1位で」
「……その自信はどこから湧いてくるんだよ」
「さあ、どこだろうね」

そんな会話を交わしていると、真樹と阜が近寄ってきた。

「何の話をしているんだ?」
「テストでどっちが勝つかについて話していたんだ」
「お、それは面白そうだな。俺達も混ざっていいか?」
「構わないよ。それより、早く教室から出ないと。日直に閉められるよ」

彼らが教室の入り口の方を見ると、まさにドアが閉められるところだった。
ドアの向こうでは、日直が鍵を持ってにやにやしている。
それが誰かは、考えるまでもなかった。

そんなことを考えるのは、クラスでは彼しかいないから。

「待てー! 閉めるな渉ー!!」

彼らはドアに突進し、先頭にいた真樹がドアを思いっきり開けた。
そして、

「渉……。また俺達を教室に閉じ込めようとしたな……?」
真樹が、黒い笑みを浮かべながら渉に迫る。

その上、

「お前の行動はお見通しだからな……?」
優子も拳を構えている。

渉がこんな目に遭うのも無理はない。
彼は悪戯の常習犯だからだ。
それがバレる度に、いつもこの2人に何かしらされている。
でも今回は、『何かしら』では済まなかったようで。

「ごめんごめんごめん、ホントにごめんって! もうやらないからさ!!」
「と言って繰り返すんだろう?」
「そろそろ、いい加減にしてもらわないとな」

「だから許してくれよ……って、おい……」


「「俺(僕)はもう限界なんだ」」


廊下に悲鳴が響くまで、後3秒。


                          ◆


3人が言い争っている間に、元気と阜は教室を出て、靴箱へと向かっていた。
「相変わらずだな、3人とも」
「まあな。姉ちゃんがドSで、真樹が腹黒で、渉がいじられキャラなのは今に始まったことじゃないし」
「……でも本気出したら、俺ら全員ドSだよな」
「でないと裏ではやっていけないからね。それより阜、今回のテストの目標はどうなんだ?」

「60~70点ぐらい取れたら、いいかな」

「……よくそれで満足出来るな」
「いいんだよ。どうせ向上心なんてないし」
「……そっか」

「で、どうするんだ? 3人ともまだ降りてこないけど」
「放っといて帰ろう。どうせ今頃先生に怒られてるだろうし、それに」


「今回は絶対に負けられないからね」