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「……と、いうことだ」
リッキーは一緒に来ていた三人に事情を説明した。
「そうか。何か重要なことを話してくれるかもしれない。行こう」
ゲールがゴーストのいる部屋に向かおうとする。
が、それをリッキーが引き止める。
「あ、それと、ユーミン達も呼んできてくれだってさ」
「え、それじゃロタールやベルフ達も?」
「そう言ってた」
「……分かった。連絡するから三人は先に行っててくれ」
「了解。行こう」
「うん」
ローリーとサムが頷き、リッキーの後について部屋を後にした。
 
 
                            ◆
 
 
ユーミンが本を本棚に戻したちょうどその時、彼女の携帯電話が鳴った。
「……弟?」
彼女はすぐに電話に出た。
「もしもし」
『もしもし、姉ちゃん? 悪いんだけど、家にいる人全員連れてきてくれる?』
「何で?」
『標的(ターゲット)の人が話があるらしい。是非全員来てくれ、てさ』
「了解。四人を起こしてすぐに行く」
『頼んだ』
 
(何かいい情報が得られそうだな)
 
通話を終えると、四人が寝ている二階へと向かった。
 
 
                           ◆
 
 
「……で、遺言は何だ」
現場に全員が揃ったところで、ゲールが切り出した。
「遺言は二つだ。一つは、娘と息子に言いたい」
「「!!」」
「もう少し、近づいて」
そう言われ、キャシーとノエルが父親に近づく。
「今まで、君達に隠してきたことがある」
ゴーストは、二人と視線を合わせて、言った。
 
「キャシー、ノエル、私は、君達の本当の父親じゃない」
 
「「え……」」
 
二人は絶句する。
 
「何で、今日つけたばかりの名前を……?」
 
「それもちゃんと話しますよ」
 
「……それに関しては、僕達も気になるところがある。詳しく教えてくれないか」
ゲールが言う。
 
「もちろん、そのつもりです」
 
 
それはキャシーが一歳、ノエルがまだ生まれたばかりの頃でした。
私はイタリアで仕事をしていたのですが、突然、日本にいる君達について調べてこいと言われました。
何故かというと、君達の父親は魔力が高く、ミルトリーファミリーで高い地位に就いていたからです。
彼が子孫を残すとなると、ルビーファミリーにとっては敵が増えることになる。
リーダー、つまり私達のボスは、そのような事態を避けたかったのです。
 
日本に着いて、君達の存在が確かだ、と分かった時、私はリーダーにどうするべきか聞きました。
その時、リーダーはこう言ったのです。
 
「まず父親を殺しなさい。そしてあなたが父親になりなさい。次に他の家族や親戚で、最後に子供二人です。何故子供が先なのかは、いきなり子供を殺ると、周りの大人が報復しかねない。でも大人を先に殺れば、幼い子供達は何もできません」
 
その言葉に従い、私はまず君達の実の父親を殺しました。
そして私は実の父に成りすましたのです。
だから私と君達は血が繋がっておらず、君達が使える魔法もミルトリー家のものなのです。
 
次に祖母、叔母、母と、周りの大人をすべて殺しました。
残念ながら弟は失敗したのですが。
現にこの場にいますし。
 
それと、名前。
君達のキャシーとノエルという名前は、実の父親がつけたのです。
 
私は彼を殺す時、今と同じように、彼に遺言はないかと尋ねたのです。
すると彼はこう言いました。
 
「娘の『梨花』と息子の『俊』という名前は、あくまでも日本で生きていくためのものだ。家族は知らないが、私は二人にもう一つの名前をつけている。娘が『キャシー』で、息子が『ノエル』だ。自分はあなたに殺されるが、あなたもいずれは二人に殺される。自分にはそんな未来が見える。だから、その時は、この名前を教えてあげてくれ」
 
おそらく、君達の記憶の奥底に、その名前が眠っていたのでしょう。
 
 
「……ということは、この名前は、」
「本当の父さんが私達に残した、宝物……」
「そういうことだ」
彼は目を閉じて、深く息を吐いた。
「もう一つは?」
ゲールが聞く。
 
「もう一つは、これからの話です」
「これからの、話?」
ユーミンが言う。
 
「はい。今だから言えるのですが、」
 
 
「ルビーファミリーは、近々世界中のミルトリーファミリーの拠点を一斉に襲撃する、という計画を立てているのです」
 
「「!?」」
 
 
「そ、それは、本当なのか!?」
ゲールが震える声で聞く。
「本当らしい。極秘事項で外部には緘口令が敷かれているが、君達には特別に教えておく」
「……そうか。実行はいつだ?」
「それは私にも分からない。でも今年のルビーファミリーの最大の目標が『ミルトリーファミリーの殲滅』なので、今年中ということは間違いない」
「分かった。それと、こっちからも聞いておきたいことがある」
「何だ、『リトル・ダンディー』」
「……ゴースト、君の目的は何だ。そして、……君はルビーとミルトリー、どちらの味方だ」
 
「……目的などありません。そしてどちらの味方でもありません。私は私のしておきたいことをやった。ただそれだけです。もう、」
 
「……私を殺しても、いいですよ?」
 
ゴーストの目は、どこか遠くを見つめているようだった。
その視線の先に、何があるのだろうか。
 
「……それでは、遠慮なく」
リッキーが剣を構え、彼に近づこうとしたが、
 
「ちょっと待て」
ゴーストが制止した。
 
「リッキー、といったかな。その剣をキャシーとノエルに渡してくれ」
 
「えっ!?」
 
「それともう一本用意してくれ。それは……ロタールとベルフに」
 
「何で名前を知っているんだよ!」
 
「ぐだぐだ言わないで、さっさと準備してください」
慌てる彼らに対して、ゴーストは次々に指示を出す。
「……はいはい、分かりましたよ。ほら」
あっさり折れたリッキーは、四人に二本の剣を渡した。
「本当に、殺るのか?」
ロタールが問いかける。
他の三人も、不安そうな目でリッキーやブラッディ・ローズのメンバーを見る。
「殺れば…何かが分かるかもしれない」
ユーミンが淡々と言う。
四人はゴーストの方を向き、そして今度はボスであるゲールを見る。
 
「……殺れ」
 
ゲールはそれだけ言った。
彼の目に、迷いは一切無かった。
 
 
四人は無言で、ゴーストに近づく。
 
キャシーとノエルが一本の剣を持ち、もう一本をロタールとベルフが持つ。
 
ゴーストは目を閉じている。
 
いつの間にか眠ってしまったようだ。
 
そしてその刃先を、ゴーストの心臓の上に持ってくる。
 
 
四人は顔を見合わせた。
 
もう誰も、不安そうな表情をしていない。
 
 
次の瞬間、刃がゴーストの心臓に突き刺さった。
 
 
鮮血があふれてくるが、誰もよけたり、怖がったりしない。
 
 
「何でだろう、不思議な感覚がする」
 
最初に口を開いたのは、キャシーだった。
 
 
「俺も。人を殺したのに、悲しくない」
 
ノエルが続く。
 
 
「なんかさ、気持ちいいんだよね」
 
ベルフも言う。
 
 
「……これが、血も涙もないってことかな」
 
そしてロタールが締めくくる。
 
 
四人は------笑っていた。