ここは、日本のどこかにある桜学園。
全校生徒は390人。
一学年が130人だ。
成績は中の中から上の下ぐらい。
それなりに勉強していれば、入れるレベルかな。
で、話は変わるけど、この学校で、3学期が始まってすぐ、今から一週間前に新しい生徒会の役員選挙があったんだ。
12人立候補して、当選したのが僕達6人。
その中で、一番票が多かった、つまり、生徒会長に選ばれたのが僕、東 健だ。
あ、「ひがし けん」じゃなくて「あずま けん」だからね。
よく間違われるから、念のため言っておくよ。
そして、新生徒会は無事に発足!
……したはずなんだけど。
何故か、あまりにも個性的な人ばかりが集まった生徒会に、なってしまったみたいなんだ。
◆
今僕は、これから生徒会室で始まる、新生徒会の初めての会議の準備をしていた。
この会議は、学校にある6つの委員会の委員長と、僕達生徒会役員が集まって、学校の様々な決め事や目標を立てるものなんだ。
ちなみに6つの委員会は、学級委員長・保健・体育・学習・美化・図書委員会だ。
会議の準備は順調に進んでいた。
けど、
彼の一言で、混乱が始まった。
「おーい、この資料の3ページが抜け落ちてるんだけど」
それを言ったのは、男子副会長の尾崎 和真(おざき かずま)。
「どれどれ」
僕はすかさず、その資料を確認する。
「表紙、1ページ、2ページ、4ページ……本当だ、3ページだけない」
1ページの目次を見てみると、3ページは『来年度の生徒会の収入・支出予定』となっている。
これはこの会議と、1ヶ月後の生徒総会で全校生徒の承認が必要な事柄だ。
つまり、ここでこの資料がないのは一大事だ。
「……もしかしたら、職員室に置き忘れてるかもしれないな。悪いけど、取ってきてくれないか?」
「りょうかーい」
そう言って、彼は生徒会室を出て行った。
じゃあ、僕はとりあえず今ある資料をすべての席に配ろうか、と思っていたが、今度は別の方向から声が掛かった。
「……あれ? チョークがない……」
そう言いながら黒板周辺を探していたのは、女子書記で、今日は黒板係の川上 渚(かわかみ なぎさ)。
「事務室に行ったらくれると思うよ」
「……分かった」
僕がアドバイスすると、彼女は静かに出ていった。
資料が抜け落ちていたと思えば、チョークがない。
初めてなのについてないな……と思っていたら、今度は仕事をサボって読書をしている人がいた。
「全く……。実、読書は帰ってからしたらどうだ? 仕事がないなら、黒板が汚れているからきれいにしてくれないか」
「分かった。……やっとくよ」
本を閉じてめんどくさそうに立ち上がったのは、男子書記の近藤 実(こんどう みのる)。
普段からよく読書している人だ。
でも今は会議の準備中。
真面目に仕事をする人だと思ったんだけど……。
はあ……、と僕はため息をついた。
2度あることは3度ある。
3度あることは……
すると、後ろから、
「ため息をついたら、幸せが逃げるよ」と、誰かが言った。
振り向くと、そこに居たのは女子副会長の加納 葵(かのう あおい)。
彼女は続けた。
「大変だね、こんなメンバーになってしまって」
「ま、まあね。みんな個性的でいいと思うけど」
「あ、それは分かるかも。でもみんなちょっと強すぎるかな。でも、」
そして彼女は、笑顔で言った。
「1年間、頑張っていこうね、健くん!」
そう言われた瞬間、心臓がドクン、と跳ねた。
そして一気に鼓動が早くなる。
「あ、ああ……!」
だから、そんなぎごちない返事しか出来なかった。
そして、僕は恥ずかしくなって、誰も居ない方向を向いた。
初めて会ったときから、何となく、分かっていた。
でもその気持ちに、気づかないでいた。
否、気づきたくなかったのかも、しれない。
認めたくなかったのかも、しれない。
でも今は、その気持ちに気づいている。
気づいてしまった、と言った方が正確なのかな。
だって、葵の言葉で、笑顔で、心臓が跳ねて、鼓動が早くなって、ぎごちない返事しか出来なくて。
そして間違いなく、今の僕の顔は真っ赤だ。
もうこうなれば、認めるしかない。
僕は葵のことが、好きなんだ、と。
それは紛れもない、真実。
……って、何を考えているんだ僕は!
僕は生徒会長で、これから会議で、今はその準備中のはずだ!
ふと周りを見ると、2人は何事もなかったかのように、普通に各自の仕事をこなしている。
よかった、変な姿を見られなくて。
と思ったのは、束の間だった。
廊下の方から、バサバサバサと、紙が落ちる時のような音が聞こえてきたんだ。
「まさか、ね」
僕ら3人は、顔を見合わせた。
廊下に出てみると、案の定、取りに行った資料を廊下に落として、集めている和真がいた。
「ごめん、風で散らばってしまったんだ」
「手伝おうか?」
実が聞いた。
「いや、大丈夫。もうすぐで終わるから、……おっと」
風が吹いて、集めていた資料が再び散らばった。
ていうか、
何で冬なのに窓が開けっ放しになっていることに誰も突っ込まないんだ!?
……しかも寒い。すごく寒い。
僕は寒さに耐え切れなくなって、生徒会室に戻った。
「あ、そうだ」
まだ廊下にいた和真が、思い出したように言った。
「蓮は補習で遅れるってよ」
……おい、また補習か、男子書記・小倉 蓮(おぐら れん)。
本当に大丈夫なのか、この生徒会は。
はあ……、と、僕はまたため息をついた。
2度あることは、3度ある。
3度あることは、4度、5度と続いてしまった。