ハロウィン当日、イタリア時間午後5時。
本部の大広間では、仮装をした人々が集まっていた。
彼らは写真を撮ったり、会話したりして、思い思いの時間を過ごしていた。
ブラローの5人はというと、
「はい、チーズ」
パシャリ。
「はい、ありがとう!」
「……どういたしまして」
「あ、君達撮っていい?」
「……ご勝手にどうぞ」
大広間に入るなり、写真撮影に引っ張りだこだった。
ファミリーの中でも最年少の部隊=可愛い、という認識が、ファミリー内に広まっているようだ。
ようやく人々がブラローから離れていくと、彼らはソファーに座った。
そして彼らのボス・ゲールは、大きくため息をついた。
「……はぁ……」
「おいおい、どうしたんだよ、浮かない顔して。折角のパーティーなんだし、楽しもうよ」
リッキーが彼に声をかける。
「そうそう。テンション上げていきなよ」
ローリーも言う。
「……この状況でテンション上げられると思うか?」
「何か嫌なことでもあったのか?」
サムが心配そうな顔で聞く。
「大有りだ。昨日は腹黒眼鏡野郎に余計なこと言われるし、」
「だからあれは余計なことじゃなくて、」
「黙れ」
「……君、俺にケンカ売ってる?」
「そんなの自分で判断してくれ。……それに、今更だけど魔法使いが魔法使いの格好ってどうなのかな、って」
「いいじゃないか。似合ってるし、可愛いし」
ユーミンが言う。
「可愛いって言うな!」
ゲールは即答した。
「……ま、まあ、それは置いといて、……って、話題ないし、俺達って暇だよな」
リッキーが困った顔で言う。
「うん、本格的に始まるのは6時からだし、機嫌の悪い人も約2名」
ユーミンがそれに答える。
「2名? ゲールだけじゃないのか?」
「僕もだ。理由は言うまでもないよな」
「スカートだろ?」
「そうだ。今すぐにでも仕返ししたくてたまらないよ」
「……だろうね」
彼らは、暗い空気に包まれていた。
◆
1時間後。
部屋の明かりが薄暗くなり、ファミリーのボス・マリノが現れた。
彼にスポットが当たる。
「みなさん、今年もこの日がやってきました。お菓子の交換やいたずらはもちろん、料理や音楽の生演奏もあります。思いっきり、楽しんでください!」
「「「Si!」」」
「ただし注意点がひとーつ。毎年言っていますが、派手ないたずらは控えてくださいね」
「「「Il beneplacito!」」」
再び部屋が明るくなり、それまでも賑やかだったのが、さらにその度合いを増した。
テーブルには豪華な料理が並べられ、部屋の隅では音楽の生演奏の準備を行っている。
「よし、今夜はこれからだな」
ユーミンが言う。
「そうだな。ていうか腹減った」
ローリーが苦笑いで言う。
「じゃあ、一人いないけど、食べますか」
「賛成!」
一方、ピアノ演奏を頼まれていたサムは、ピアノの前に座り、楽譜を広げていた。
準備は万端だ。
「おーい、用意はいいか?」
彼は共に演奏する音楽隊に声を掛けた。
「「Si!」」
「それじゃ、始めよう。uno due tre quattro(1、2、3、4)!」
広間に、心地よいジャズの音色が広がる。
ちょうどその演奏が始まった時、2人の少女が音楽隊の前に来た。
マリンと梨花だ。
マリンは天使、梨花は魔女の格好をしている。
「あれ? あのピアノ弾いている子って……」
梨花が聞く。
「サムだよ。今まではユーミンが弾いていたけど、今年は何か色々あって彼になったの」
「そうなんだ。そういえばゲール達は?」
「どこにいるんだろう……あっ、あそこでご飯食べてる! おー……」
「こらこら。……昨日のこともあったし、今日は関わらないでおこう、ね?」
「はーい……」
◆
午後8時。
「おいおい、こんなにもらって食べ切れるのか?」
「……言っとくけど、僕は甘いものは駄目だからな」
演奏を終えたサムが合流したブラローは、いろんな人とお菓子を交換し合っていた。
でもあまりにもたくさん貰い過ぎて、食べ切れるのか心配になってきていた。
「えっと、他に交換していない人はいる?」
ゲールが聞く。
「ボスとまだ交換してないな」
ユーミンが答える。
「ならさっさと交換しようよ。ボスも暇そうにしてるし」
彼らはボス・マリノの前に行った。
「お、君達か。合言葉は?」
マリノは笑顔で言う。
「ボス、Trick or treat?」
5人を代表して、ゲールが言った。
「よし。お菓子をあげよう……おっと」
マリノはお菓子の入った袋を落とした。
すると、
ポンッ。
袋から煙が上がり、5人はそれに包まれてしまった。
「うわっ!」
「な、何だ?」
彼らも、周囲の人々も驚いている。
しばらくして、煙が晴れると……
「か、可愛いー!!」
「カメラ! カメラを出せ!」
周囲の人々は歓喜に満ち溢れ、歓声をあげている。
煙に包まれた彼らはというと……
「あ、あれ? 何か、妙に騒がしくないか?」
リッキーが言う。
「そうだな。しかも心なしかボスが大きく見える……ああーっ!」
ローリーが叫ぶ。
「ど、どうしたんだ?」
サムが聞く。
「俺ら、小さくなってるー!!!」
彼らの身長は、いつもの半分程になっていた。
「!! ほ、ほんと、だ……」
彼らはうな垂れた。
「……おいマリノ、俺達が何か考えているのを見て、自分も何かしてやったろって思ったな? ああ?」
ユーミンが一気に捲くし立てる。
「その通りだよ。一方的にやられるのもあれかな、と思ってね」
マリノは、してやったり、という顔をしている。
「……だろうね。こうなったら、ここでやるしかないな」
「ええっ!? こ、ここでやるのか? この状態で?」
ゲールが驚いて言う。
「大丈夫。周りには被害が出ないように、うまくやるからさ」
「……分かったよ。みんなもいいな?」
彼らは頷いた。
「君達、何をごそごそ話してるんだ?」
マリノが興味深そうに聞いてきた。
「……知りたいですか?」
「ああ、是非」
「……それなら、お教えしましょう」
彼女がそう言うと、大広間は薄暗くなった。
「マリノさん、」
「はい」
「Trick or ……」
「trick?」
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